ピンハネ、トラブル…急成長する「援デリ」の“うまみ”と“落とし穴”(産経新聞)
【衝撃事件の核心】
出会い系サイトで援助交際相手を募り少女を派遣する「援デリ」業者が、警察当局に相次いで摘発されている。1990年代から社会問題となっている援助交際は、今や「仲介者」を通してビジネスとして成り立っているのだ。男女が直接やり取りせず間に仲介を通すことで、気軽さと安心感がうまれることが、急増している背景にはあるようだ。あまりの盛況ぶりに“本家”であるデリヘル嬢も登録するほどだという。だが高いピンハネや客からの脅迫などトラブルも尽きず、気軽さの裏に危険なワナも潜んでいる。(滝口亜希)
[フォト]連行される「援デリ」店員、実技テストの疑いも
■元手いらずで手軽に“起業” 急速拡大の裏ビジネス
《初期費用がほとんどかからない》
《パソコン1台あれば店舗がなくても始められる》
《アシがつきにくい》
《キャストを確保しやすい》…。
3月16日、援デリを運営したとして警視庁に児童福祉法違反(淫行)と売春防止法違反(周旋)の疑いで逮捕された東京都港区の無職男(32)の関係先から見つかったのは、「援デリ事業計画書」と題する文書だった。そこには「援デリのメリット」が延々と書き連ねられていた。
援デリとは、少女らが体を売る「援助交際」と派遣型風俗の「デリバリーヘルス」を合わせた造語。システムを簡単に説明すると、「キャスト」と呼ばれる援助交際希望の少女と男性客を引き合わせ、紹介料として“援助交際費”の一部を受け取るというものだ。
「新宿で会える人」
「池袋に行きます。遊べる人いますか」
業者は女性を装って出会い系サイトなどに書き込んで客を募集。書き込みには、捜査の手が及ばぬよう“飛ばし携帯”と呼ばれる他人や架空の名義で契約された携帯電話を使用するのが主流となっている。
元手いらずで簡単に稼げるということから、「ここ数年、裏ビジネスとして急速な広がりを見せている」(風俗業界関係者)のだという。実際、警視庁に逮捕された無職男も、「アルバイト感覚で始めた」と供述。客の募集から売り上げ管理まで、すべて1人で行っていたという。
1日40万円−。
「援デリ事業計画書」には、向こう3カ月間の売り上げ目標としてこう掲げられていた。
1日当たり20人のキャストに1回2万円で援助交際をさせる計算だが、実際には昨年8月29日に運営を始めてからわずか17日間で、キャストの一部が警視庁に補導されて発覚。キャストも15〜17歳の3人のみだったため、男が手にした利益はわずか約30万円だった。
■素人ブランドに若さと安さ プロも“参戦”
援デリをめぐっては、今年に入ってから神奈川県警が「(援デリの)渋谷グループの責任者」を自称する大学生の男(19)を逮捕したほか、警視庁も女子中学生(15)にわいせつな行為をさせたとして、男女3人のグループを逮捕するなど摘発が相次いでいる。
「摘発が相次いでることから分かるように、援デリは今、一番のびている風俗業態」
こう話すのは風俗ライターの村上行夫氏だ。
村上氏によると、援デリが登場したのは3年ほど前から。女の子が素人ということに加え、ほとんどは10代と若いことも人気を後押しした。また、値段的にもデリバリーヘルスで“プロ”の女性に手数料を払って性交をするよりも安く、この不況下でも人気が伸びているという。
「今や、援デリコーディネーター(仲介業者)というビジネスが立派に成立し、プロの風俗嬢が素人を装って登録している場合すらある」(村上氏)
気軽にお金を稼ぎたいという少女を、援デリ業者が巧みに引き込んでいく構図も浮かぶ。
警視庁に逮捕された男女グループは、“打ち子”役が女性を装って自己紹介サイトの「プロフ」に、「女の子限定でお仕事紹介します」「女の子なら年齢問わず」などと書き込みキャストを募集。リーダー役が応募してきた少女らに「2、3カ月もすれば着る物も変わってくるよ…」などと“うまみ”を強調して援助交際を持ちかけていた。
このグループは繁華街で風俗嬢をスカウトする街頭スカウトマンも使って少女を勧誘していた。
グループは、16〜18歳の少女を中心に延べ約40人をキャストとして派遣し、平成20年10月からの1年間で約3360万円を売り上げていたとみられる。
「好きな時間を選んで働けたので、アルバイトのような感覚だった」
「短時間で高額が稼げたから」
「お客さんとの待ち合わせは組織の人(業者)が決めてくれるので楽だった」
キャストとして働いていた少女たちは、応募した動機についてこう説明したという。
このグループの場合、キャストの取り分は客が支払う1回2〜3万円の代金の約半分。それでも、9日間で13人を相手にして16万5千円を稼いだアルバイトの少女(17)や、15日間で25人を相手にして35万6千円を稼いだ女子高校生(16)までいた。
半分をピンハネされたとしても10代の少女ができる仕事としては、かなり高収入だということが分かる。
■脅迫、性犯罪… 絶えぬトラブル
密室で大人の男と2人っきりになることから、これまでの援助交際と同様に少女がトラブルに巻き込まれるケースも少なくない。
「客に裸の写真を撮られて脅されたり、性犯罪に巻き込まれたりする場合もある。非常に危険な環境に身を置いているということを認識してほしい」
女性の売春問題に取り組むNPO法人「ポラリスプロジェクト」日本事務所の藤原志帆子コーディネーターは少女に呼びかける。
同事務所には、援助交際を行っている少女や、出会い系サイトでトラブルに巻き込まれた少女などからの相談も多く寄せられる。
「体を売るのもパンツを売るのも同じだと考えている子も多い」
藤原さんは少女たちについて、性への意識が低下していると感じている。しかし一方で、お金を稼ぐために割り切ってやっているというだけではないという。 「援助交際に走ってしまう背景には、『短時間だけでも誰かにかまってほしい』という寂しさや、『誰かに止めてほしい』という心のSOSが垣間見える。相談をくれる少女たちは、自分の心にも体にも自信がない子が多い。親や地域が、自分の大切さを教えていかねばならない」
藤原さんは、周囲が援デリに走る少女らをケアする必要性を訴える。
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・ 「まま ずうっとすき」継母はなぜ虐待したのか
・ 「何も言えなくて…」ハマった薬物乱用“アラ還”シンガーの孤独と苦悩
・ 【キブンの時代】第2部 危険はどこに(1)新型インフル「偏執病」(産経新聞)
・ 首相動静(3月30日)(時事通信)
・ <松戸女子大生殺害>竪山被告を追起訴 一連の捜査を終結(毎日新聞)
・ 小沢氏、共同資産不記載 土地とホテル 公表義務に抵触も(産経新聞)
・ <掘り出しニュース>わさおの“ぶさかわいい”ティッシュ人気 北東北限定(毎日新聞)
出会い系サイトで援助交際相手を募り少女を派遣する「援デリ」業者が、警察当局に相次いで摘発されている。1990年代から社会問題となっている援助交際は、今や「仲介者」を通してビジネスとして成り立っているのだ。男女が直接やり取りせず間に仲介を通すことで、気軽さと安心感がうまれることが、急増している背景にはあるようだ。あまりの盛況ぶりに“本家”であるデリヘル嬢も登録するほどだという。だが高いピンハネや客からの脅迫などトラブルも尽きず、気軽さの裏に危険なワナも潜んでいる。(滝口亜希)
[フォト]連行される「援デリ」店員、実技テストの疑いも
■元手いらずで手軽に“起業” 急速拡大の裏ビジネス
《初期費用がほとんどかからない》
《パソコン1台あれば店舗がなくても始められる》
《アシがつきにくい》
《キャストを確保しやすい》…。
3月16日、援デリを運営したとして警視庁に児童福祉法違反(淫行)と売春防止法違反(周旋)の疑いで逮捕された東京都港区の無職男(32)の関係先から見つかったのは、「援デリ事業計画書」と題する文書だった。そこには「援デリのメリット」が延々と書き連ねられていた。
援デリとは、少女らが体を売る「援助交際」と派遣型風俗の「デリバリーヘルス」を合わせた造語。システムを簡単に説明すると、「キャスト」と呼ばれる援助交際希望の少女と男性客を引き合わせ、紹介料として“援助交際費”の一部を受け取るというものだ。
「新宿で会える人」
「池袋に行きます。遊べる人いますか」
業者は女性を装って出会い系サイトなどに書き込んで客を募集。書き込みには、捜査の手が及ばぬよう“飛ばし携帯”と呼ばれる他人や架空の名義で契約された携帯電話を使用するのが主流となっている。
元手いらずで簡単に稼げるということから、「ここ数年、裏ビジネスとして急速な広がりを見せている」(風俗業界関係者)のだという。実際、警視庁に逮捕された無職男も、「アルバイト感覚で始めた」と供述。客の募集から売り上げ管理まで、すべて1人で行っていたという。
1日40万円−。
「援デリ事業計画書」には、向こう3カ月間の売り上げ目標としてこう掲げられていた。
1日当たり20人のキャストに1回2万円で援助交際をさせる計算だが、実際には昨年8月29日に運営を始めてからわずか17日間で、キャストの一部が警視庁に補導されて発覚。キャストも15〜17歳の3人のみだったため、男が手にした利益はわずか約30万円だった。
■素人ブランドに若さと安さ プロも“参戦”
援デリをめぐっては、今年に入ってから神奈川県警が「(援デリの)渋谷グループの責任者」を自称する大学生の男(19)を逮捕したほか、警視庁も女子中学生(15)にわいせつな行為をさせたとして、男女3人のグループを逮捕するなど摘発が相次いでいる。
「摘発が相次いでることから分かるように、援デリは今、一番のびている風俗業態」
こう話すのは風俗ライターの村上行夫氏だ。
村上氏によると、援デリが登場したのは3年ほど前から。女の子が素人ということに加え、ほとんどは10代と若いことも人気を後押しした。また、値段的にもデリバリーヘルスで“プロ”の女性に手数料を払って性交をするよりも安く、この不況下でも人気が伸びているという。
「今や、援デリコーディネーター(仲介業者)というビジネスが立派に成立し、プロの風俗嬢が素人を装って登録している場合すらある」(村上氏)
気軽にお金を稼ぎたいという少女を、援デリ業者が巧みに引き込んでいく構図も浮かぶ。
警視庁に逮捕された男女グループは、“打ち子”役が女性を装って自己紹介サイトの「プロフ」に、「女の子限定でお仕事紹介します」「女の子なら年齢問わず」などと書き込みキャストを募集。リーダー役が応募してきた少女らに「2、3カ月もすれば着る物も変わってくるよ…」などと“うまみ”を強調して援助交際を持ちかけていた。
このグループは繁華街で風俗嬢をスカウトする街頭スカウトマンも使って少女を勧誘していた。
グループは、16〜18歳の少女を中心に延べ約40人をキャストとして派遣し、平成20年10月からの1年間で約3360万円を売り上げていたとみられる。
「好きな時間を選んで働けたので、アルバイトのような感覚だった」
「短時間で高額が稼げたから」
「お客さんとの待ち合わせは組織の人(業者)が決めてくれるので楽だった」
キャストとして働いていた少女たちは、応募した動機についてこう説明したという。
このグループの場合、キャストの取り分は客が支払う1回2〜3万円の代金の約半分。それでも、9日間で13人を相手にして16万5千円を稼いだアルバイトの少女(17)や、15日間で25人を相手にして35万6千円を稼いだ女子高校生(16)までいた。
半分をピンハネされたとしても10代の少女ができる仕事としては、かなり高収入だということが分かる。
■脅迫、性犯罪… 絶えぬトラブル
密室で大人の男と2人っきりになることから、これまでの援助交際と同様に少女がトラブルに巻き込まれるケースも少なくない。
「客に裸の写真を撮られて脅されたり、性犯罪に巻き込まれたりする場合もある。非常に危険な環境に身を置いているということを認識してほしい」
女性の売春問題に取り組むNPO法人「ポラリスプロジェクト」日本事務所の藤原志帆子コーディネーターは少女に呼びかける。
同事務所には、援助交際を行っている少女や、出会い系サイトでトラブルに巻き込まれた少女などからの相談も多く寄せられる。
「体を売るのもパンツを売るのも同じだと考えている子も多い」
藤原さんは少女たちについて、性への意識が低下していると感じている。しかし一方で、お金を稼ぐために割り切ってやっているというだけではないという。 「援助交際に走ってしまう背景には、『短時間だけでも誰かにかまってほしい』という寂しさや、『誰かに止めてほしい』という心のSOSが垣間見える。相談をくれる少女たちは、自分の心にも体にも自信がない子が多い。親や地域が、自分の大切さを教えていかねばならない」
藤原さんは、周囲が援デリに走る少女らをケアする必要性を訴える。
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2010-04-06 18:32
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